Broadcomの旧WPS Monitorに、Wi-Fiの鍵の読み出しや、機器上でのコード実行につながる脆弱性が報告されました。[3] 攻撃者はWi-Fiの電波が届く範囲にいる必要がありますが、ネットワークキーを知らず、通常のWPS登録を完了せずに脆弱な処理へ到達できると報告されています。[2] 研究者のFAQは、設定でWPSを無効にしても脆弱なパーサーが削除または完全に停止されるとは限らないと説明しています。また、ファームウェアの更新で本件に対処できるか、機器のベンダーやISPへ確認するよう案内しています。まず型番・ハードウェア版・稼働ファームウェア版を控え、提供元に本件の影響と修正版の有無を確認します。

研究者のQuentin Kaiser氏は2026年10月16日に技術報告を公表しました。「WPSplinter」は、研究者が一般向けの説明ページに付けた呼称です。[7]

申告された総量と、コピー先の容量は別の検査

問題は、分割して届くEAP-WPSメッセージを受信側で組み立て直す処理にあります。研究者が示した実装では、受信量と先頭断片が申告した総量を比較する検査はあります。しかし、その総量やコピー範囲が、固定長の受信バッファに収まるかを検査していません。[1, 4]

再構成用のfrags_receivedは2048バイトの配列です。累積受信量を配列先頭からのコピー位置(オフセット)として使いながら、配列の容量を上限として確認しないため、申告総量の範囲内でも領域外へ書き込めるのが問題です。[1, 4] 通常のWPS登録完了を必要としないので、PINを推測して正規の登録を通す攻撃とは成立条件が異なります。[8]

デモ・機種一覧・検出では、確認できる範囲が違う

研究者のデモでは、Orange BelgiumのASKEY TCG3000でコードを実行してWi-Fiの鍵を読み出す動作や、ProximusのBBOX3V+で無線フレームを使うリバースシェルが示されました。[3] 公開機種一覧の全製品・全ファームウェアで同じ結果を実証したことや、実際の被害件数を示すものではありません。[12]

確認方法確認できる範囲と限界
個別のデモ試験した実機での動作。別のハードウェア版や、すべてのファームウェア版への適用は確定しません。[12]
機種一覧(README・FAQ)Confirmed表記や、記載された確認版の情報。Arcadyan VRV9517の「少なくともv6.00.18まで」から、全版の脆弱性や新しい版の安全は確定しません。[5, 13]
fingerprinter・YARA旧実装の特徴を持つ機器やファームウェアの候補。fingerprinterのLIKELY_VULNERABLEは、実機でのコード実行成立を実証する判定ではありません。[10, 6]

機種一覧は網羅的ではありません。未掲載であることや、Broadcom製チップの搭載だけで、個別ファームウェアの安全・脆弱を判定することもできません。[14]

実装の置き換えと、製品への修正版の配布を分ける

研究者の発表資料に転載されたBroadcomの回答は、2018年から旧WPS MonitorをHostAPDとWPA Supplicantに基づく実装へ置き換えたと説明しています。[11] OEMやISPによる修正版の配布状況は、製品ごとに確認が必要です。

研究者は、自身が確認した機器について、2026年10月15日時点で未修正と報告しています。[15] 10月19日現在や一覧掲載機種全体の修正状況は、製品・ハードウェア版・ファームウェア版ごとに確認が必要です。

補足:eCos系とLinux系の修正余地

研究者は、Linux系はOEMが実装を移行すれば対応余地がある一方、旧eCos系は実用的な修正が困難と評価しています。[9] この評価も、個別製品の更新提供状況を確定する情報とは分けて読みます。

管理者が次に確認すること

以下は、資料の条件を踏まえた本記事の運用判断案です。

  1. 機器を特定する。 本体のラベルや管理画面の機器情報などで、製品型番、ハードウェア版、稼働中のファームウェア版・ビルド番号を確認し、提供元ISP名も含めて記録します。表示が見つからない項目は、提供元へ照会します。
  2. 提供元へ本件の修正を確認する。 その組み合わせが旧WPS Monitorの問題に該当するか、修正済み版があるか、どの版で修正され、どう配布されるかをメーカーやISPへ確認します。単に「最新版である」「WPSをオフにした」という回答を、本件の修正確認の代わりにはしません。本件の修正版が提供されている場合は、提供元の手順で適用し、稼働版を確認します。
  3. 確認できない間の運用を決める。 状況を未確認として扱い、送受信を含む全無線機能の停止や、影響を受けないと確認できる機器への交換を、提供元と相談します。通信断や接続機器への影響も併せて検討する暫定案であり、全製品で有効性を確認した公式対策ではありません。

自力でファームウェアを解析できなくても、型番と版を添えて確認する経路は取れます。本記事では、日本向けの具体的な影響機種、第三者による実環境での悪用の有無や被害件数、全製品に共通する安全なファームウェア版を特定していません。